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2020-03-11

「何で、何でや?」

「何でや。何で武志や。何か悪いことしたか。何もしてへんで。何も悪いことしてへん。ほやのに何で。あの子ええ子やのに。あの子、ええ子やで。ほんまに。何もしてへん。何も悪いことしてへんのに。」NHK朝ドラ「スカーレット」より
武志は女性陶芸家の喜美子の一粒種の自慢の息子で、自身も陶芸の道を志しています。そんな武志が慢性骨髄性白血病に冒され、余命が3年から5年程度であることを、喜美子は医師の大崎から告げられます。
 そのことを本人に告知するよう医師は喜美子に助言しますが、それができずに喜美子は悶々とします。そんなある日、幼なじみで親友でもある照子が喜美子を訪れます。照子は喜美子が隠し事をしていることに気づき、悩みをはき出すよううながします。
 冒頭の台詞は、喜美子が照子の肩で泣き崩れながら本音を吐露する場面でのものです。
 「慢性骨髄性白血病は染色体の異常によって生じ、慢性期の後に、病状が急変し死に到る」という大崎医師の説明は、喜美子の「何で?」という問いに答えてはいません。

 治療法が確立し、薬や手術によって治る病気であればともかく、人がさまざまな悩みに直面したときに発せられる「何で?」という問いに、科学や理性による解答は万能ではありません。もちろん、安易ななぐさめや同情のことばも無意味です。
 おそらく、人が理不尽な境遇に出会ったときに発せられる「何で?」という問いに正解はないのでしょう。
 劇中で大崎医師は喜美子に伝えます。「僕は患者さんに本当のことを伝えたいと思っています。病名の告知をするということです。病と向き合う力は治療には必要です。僕は生きてほしいんです。 しっかりと最後まで生きて欲しいんです。」
 お浄土の阿弥陀仏、諸仏・菩薩、先だたれたご先祖もきっと、私たちが困難に直面したとき大崎医師と同じ想いを抱かれるのではないでしょうか?
合掌

【諸法実相】
ものごとをあるがままにとらえ、それを受け入れ、それに即して生きていくことが仏道、すなわちお釈迦さまの説く生き方です。仏教はまた諸法実相、すべてのことはそのままで真実であるとも説きます。

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